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総会での議決と議事録作成の手順

議決の基本原則を理解する

国会をはじめとして、多くの議会では代議員1人につき1票と定められています。議決の際に、議員総数の過半数を獲得した議案が可決となります。これはわかりやすい例です。

しかし、マンションのなかに、いろいろな広さの住戸がある場合があります。こういう場合も、同じ1票として扱うべきでしょうか?

基本原則としては、所有する専有部分の床面積の割合分だけ議決権を持つことになりまうs。ただし、区分所有法では、議決権について管理規約で決められるように規定があります(第38条)。

標準管理規約では、所有する床面積の割合を反映させながら、使いやすい数値に直す方法を採用しています。721対289対342ならば、7対3対3.5のようにです。ただし、各戸の専有部分の面積に大きな差がなければ、それぞれ1票とする方法もあります。

また複数の物件を所有している者がいる場合には、所有している物件の票数をすべて加算すればいいでしょう。

その反対に、1戸に複数の区分所有者がいる場合もあります。たとえば、夫婦名義で所有している場合などが相当します。この場合は区分所有者は2名ですが、2名ともが議決権を持つのではなく、いずれか代表者が議決権を持つと考えるべきでしょう。この場合に、誰が議決権を持つのかは、区分所有者のなかで話し合って決めておくものでしょう。これが同居している夫婦であれば問題は少ないのですが、他人同士で、しかも誰もその物件に住んでいない場合もありえます。そこで議決権を持つ者を、あらかじめ管理組合に届けておくような取り決めが必要です(標準管理規約第44条3項)。

区分所有者本人が総会に出席できないケースも多いでしょう。特に、所有しているが住んでいない場合に起こり得ます。そこで書面または代理人によって議決権を行使する方法も管理規約で定めておくのがいいでしょう。標準管理規約では、代理人になれる人についての規定があります。組合員の家族などの同居している人、同じマンションに住む他の組合員、または同居の家族、組合員と賃貸契約を結んで実際に住んでいる賃借人です。

普通決議と特別決議の違い

総会での決議には、「普通決議」と「特別決議」とがあります。

収支決算書、次年度予算の承認、および次期役員の承認など、特別決議以外の決議は基本的に普通決議です。

普通決議で議決される条件は、基本的に過半数ですが、単なる頭数だけではありません。まず議案に賛成する区分所有者の数が、区分所有者の総数の過半数を超えることが必要です。さらに先に述べた議決権数においても、賛成者の議決権数を加えたものが、全議決権総数の過半数を超えなくてはなりません。この両方が過半数を超えた場合に、普通決議がなされたことになります。

次に特別決議ですが、規約の設定、変更、廃止や、管理組合の法人化および解散、それに区分所有者の共同の利益に反する行為を行なった者に対する専有部分の使用禁止請求、競売請求、引渡請求などにおいて適用されます。

特別決議の場合、賛成する区分所有者が全体の4分の3以上、さらに賛成者の議決権数の合計が全体の4分の3以上である必要があります。

少数意見にも配慮する

マンションでの決めごとは、数字で押しきればいいというものではありません。基本的に、同じ建物のなかで生活している者同士です。強引に採決したのでは、次の日から顔を合わすのも気まずくなるでしょう。反対者や少数派の人たちの意見もよく聞いた上で、できるだけ考慮していることも必要です。

多数決が、一部の人には面白くない場合もあります。既得権を持っている人が、手放したくないと考える場合などです。

駐車場を例にとりましょう。駐車場の絶対数が足りないマンションで、分譲時に抽選で当選した人だけが確保していたり、数は足りていても出し入れのしやすい場所を押さえている場合があります。駐車場がなかったり、不便な場所に停めている人たちにしてみれば、「駐車場は毎年、くじ引きで決めるべきだ」と考えて当然でしょう。そこで議案に出すとします。既得権を持っている人にとっては、「後から来た奴らにひっかきまわされてる」と感じることでしょう。

もちろん公平、平等に決めることは大切です。しかし、数で押し切って、強引に議決してしまうと、後になって、特別決議の必要な議案が出てきたときに協力を得られなくなるかもしれません。

このようなケースでの対応策としては、既得権の一部を考慮することです。たとえば、同じ駐車場所を引き続き使えるようにする代わりに、利用料金を上乗せするなどが考えられます。

議決権行使書による参加も可能

区分所有者が事情があって総会に出席できない場合には、議決権行使書による方法や、代理人に出席してもらって行使することが認められています(区分所有法第39条2項)。

この場合の議決権行使書とは、事前に通知を受けた議案について、会日前に賛否を記載した書面を提出して、議決権を行使する方法です。自らの意志によって議決に参加する点で、委任状とは区別されます。

一方、代理人が出席する場合、法律上は特に委任状の提出を要件とはしていません。しかし管理規約において、委任状の提出を義務づけていることが多いようです。代理人になるのは、同居の家族、他の区分所有者、それに賃借人など、規約によって制限されている場合が多いので、確認が必要です。

議事録の効力と作成手順

総会での決議は大きな効力があります。したがって総会での議事内容を、きちんと議事録に記録する必要があります。

この議事録は単なる会議の記録と軽く考えてはいけません。区分所有法において、議長に対して議事録を作成し、保管することを義務づけています(第42条)。作成しなかったり、虚偽の事実を記載したりした場合には、10万円以下の過料に処されるという規定もあります(区分所有法第69条)。

議事録には、議事の経過の要領およびその結果を記載します。具体的には開会、議題、議案、討議内容、評決方法、閉会などです。正確に記載する必要がありますが、議事内容をテープに録音して、一字一句を起こす必要はありません。あくまでも要領と議決の内容を記録すればいいのです。もちろん重要案件や理事長の業務報告なども記載する必要があります。

また決議に関しては、数字による根拠を示す必要があります。区分所有者総数、議決権総数に出席者数、議決権数、さらに議決が行なわれた際の賛成者数、議決権数を記載しておく必要があります。

総会が終了した後には、議事録には、議長および出席した組合員2名が署名押印しなければなりません。その上で議事録はきちんと保管して、利害関係人が閲覧したい場合には応じる必要があります。

総会では決議は賃借人にも効力があります。さらに総会後に中古で住戸を購入した区分所有者にも、同じように効力が及びます。そうした人たちが、後になって「総会でどんな話し合いがなされたのかを知りたいので、議事録を見せてほしい」と言ってくる場合もあるでしょう。もし、決議内容に不服があったとしても、総会において適正に決議され、しかも議事録に正確に記載されていたならば、その決議には従わなければなりません。

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