室内で漏水が起きたらどうなる?
ある住戸で天井から水が落ちてきて、布団や洋服がびしょびしょに濡れてしまったり、家具が使いものにならなくなったとします。通常、誰も故意に水をこぼしたりはしないので、配水管から漏れた可能性が高いと考えられます。
こうした場合、漏水の起こった配水管が専有部分であるのか共用部分なのかによって、責任の所在が分かれます。そこで被害者は、まずは上階の住民に対して、調査の協力を求めることになります。この場合に上階の住民は調査に協力しなければなりません。実際に立ち入りを拒否した住人が、不法行為と認定された判例もあります。
調査の結果、漏水箇所が専有部分であると判断したならば、その部分の配水管の所有者が損害賠償の責任を負うことになります。居住者は、こうりた事態がいつ起こってもいいように、損害保険に加入することも考えるべきです。
ただし、築年数の比較的浅いマンションだとしたら、漏水が起こったのは、マンションを分譲した販売会社や、請負工事をした業者の過失による可能性が高いと考えられます。その場合は、漏水の被害者と漏水を起こした部屋の所有者が一緒になって業者に損害賠償を請求できます。
建物の構造や配水管などに原因があると感じたら、まずは瑕疵担保責任期間(引渡しから2年が通常です)やアフターサービス期間内であるかを調べます。もし期間内であれば、すぐに該当する業者に連絡するといいでしょう。
また、それらの期間を過ぎていても、給配水管接続不良、こう配不良、容量(径)不足などが原因である場合には、施工業者や販売業者に対して損害賠償の請求が可能です。
漏水した配水管が共用部分だと判明した場合には、区分所有者全員の責任となり、管理組合が損害賠償をしなければなりません。
漏水部分がどの部分なのか、特定できないケースの場合には、区分所有法では共用部分に瑕疵があると推定されるという規定があります(第9条)。管理組合でも、そうした事態を予想して、損害保険に加入しておくべきでしょう。漏水の場合は、管理組合が加入している施設賠償保険で対応することが一般的です。もちろん、漏水の原因が販売会社や工事業者にある場合には、業者に損害賠償を請求できます。
ところで、このような漏水事故の場合は、管理人や管理会社は責任を負うことがありません。ただし、漏水を報告されながら、適切な処理を取らなかったことで被害が拡大した場合には、その部分に関して責任を問われる場合もあります。
床をフローリングにするのは自由?
専有部分は区分所有者の所有なので、基本的に自らの判断で改良できます。ただし、マンションは建物全体に関する強度計算をした上で建てられていますので、建物の躯体に影響を与える工事をすることはできません。
また、改良による近隣への影響について、工事中の騒音を含めて考えに入れなければなりません。区分所有法においても、建物の保存に有害な行為や、建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為は禁止されています(第6条第1項)。
たとえば、床をフローリングにする場合、階下への騒音が大きくなる可能性があります。そこで、何らかの調整が必要になります。マンション全体としての意見を統一することが望ましいので、管理規約や使用細則で具体的に定めておくのがいいでしょう。
標準管理規約では、「区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取り付け若しくは取り替えを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない」とあります。その際には、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出する義務があります。
管理組合では、その申請に基づいて、理事会にはかることになります。そこで承認されると、書面で通知されます。最近ではリフォームに関するトラブルが増えていることから、その承認書面がなければ、リフォーム業者も工事に取りかからなくなっています。
実際に工事を始めるとなると、管理組合の承認を受けた上で、上下階、および隣接する住戸の区分所有者、居住者に対して、事前に伝えておくことが必要です。
玄関の錠は自分で取り替えることができるか
ピッキング、カム送りなどの対策は、個人と管理組合のどちらで対応すべきものでしょうか?
標準管理規約では、「玄関扉は錠及び内装塗装部分を専有部分とする」とあります。したがって、マンションの管理規約がこれに準じているとしたら、シリンダー部分は自分で交換しても差し障りはありません。
しかし、補助錠などの設置は共用部分に関わることなので、個人での対応はできません。マンションの防犯は居住者の全員に関わってくる問題です。管理組合で話し合って対策を決めるのがいいでしょう。