管理会社が管理組合を管理していないか
「分譲してから20年経つけれど、まだ一度も総会が開かれたことがない。管理組合はないのだと思っていた」
こんなショッキングな事例が現実にありました。実際には、管理組合のない分譲マンションは存在しません。管理組合は形のないものですから、「ある」というよりも、「法律上は存在している」と言うべきでしょうか。
区分所有法によれば、分譲マンションが売買されて、区分所有者が誕生した時点で、自動的に管理組合も生まれたことになります。
冒頭で紹介したケースでは、そのマンションを中古で買った人が転居してきたところ、管理組合がないのでおかしいと思って声を上げたことから、他の区分所有者たちも気づいたのでした。
分譲から20年後、ようやく設立総会を開き、理事や理事長も選任しました。今では管理組合も機能して、総会も毎年1回開くようになりました。
管理組合が形骸化しているケースは多い
管理組合がないというのは極端な話ですが、管理組合が形骸化していることは珍しくありません。
管理規約、長期修繕計画などはデベロッパーが分譲時から作成しており、理事などの役員は部屋の順番通りに名前だけ就任する。総会となると、議案書は管理会社がつくり、委任状集めもしてくれる。そのまま無風のシャンシャン総会となり、次の年に引き継がれる。賃貸マンションみたいに管理会社に家賃感覚で管理費を払っているだけ・・・・・。
これでは、まるで管理人や管理会社がマンションや居住者を管理しているようなものです。管理会社が管理組合を運営するのではありません。管理組合が管理会社に仕事を発注するものです。
管理組合が機能していないと、損をするのは区分所有者自身です。まず毎月、払っている管理費が、どう使われているかさえわかりません。
マンションの定期点検(法定点検)などを行っていないことはないと思いますが、業者の選定や、支払う金額の適正なのかを確かめようがありません。修繕積立金にしても、本当に適正な資金計画に基づいているのかがわかりません。何年か後の大規模修繕の時期になって、大幅に資金不足が発覚する可能性もあります。
また、駐車場を拡張したり、衛星放送の共同受信施設を設置したいと思っても、どこに話を持っていけばいいのかわかりません。
さらに、敷地内や居住者同士でトラブルが起こった場合にも、どう解決すればいいのか迷うことになります。
管理組合を新たに設立するには?
それでは管理組合が事実上、機能しておらず、新たに設立しなければならないケースについて、行なうべきことを述べましょう。
まず、管理規約があるかどうかを調べます。管理会社、または分譲したデベロッパーに尋ねてみます。管理規約があるとしたら、そのなかで管理者が決められているはずですから、その管理者に対して総会の開催を要請することになります。
もし管理規約がなかったり、あっても管理者が指定されていない場合には、区分所有者総数の5分の1以上、および総議決権数の5分の1以上の賛成があれば、総会を開催することができます。
総会の期日が決まったら、当日までに多くのことを準備しなければいけません。
まず管理規約案を作成する必要があります。これは標準管理規約を参考にして作成すればいいでしょう。
次に総会発起人名簿を、本人の署名捺印をつけて揃えます。理事長をはじめとした理事の候補を決め、管理費の金額についての案や、その年度分の予算案をつくります。
その後は、当日の式次第や議案書を作成していきます。管理組合の設立総会には、区分所有法などに関する専門知識が必要となりますので、マンション管理士などの専門家のアドバイスを受けたほうがいいでしょう。