まずは管理組合で相談する
マンションの住戸が、反社会的な活動を行う団体の事務所として使われていたり、社会通念を著しく逸脱した活動を行う宗教団体の活動拠点になってしまったりすることもあるかもしれません。
反社会的な行為を行う者が住んでいるのではないかと心配になった場合は、まずは管理組合に相談してみることです。区分所有者名簿があれば、調べることができます。ただし、まったくの誤解で普通の人の場合もあるので、くれぐれも慎重に調べることが必要です。
専有部分の使用禁止や競売も請求できる
区分所有法には、共同の利益に反する行為をした区分所有者に対して、その行為の停止を求めることができると定めています。さらに、その行為を事前に予防するために必要な処置をすることも認められています(同法第57条)。
状況によっては、当分の間、その専有部分の使用禁止を請求することもできます(同法第58条)。その場合は、まず総会において区分所有者総数および議決権総数の4分の3以上の賛成により議決(特別決議)されること、さらに問題行為者自身に事前に弁明の機会を与えることが必要です。この請求を行うには、必ず訴訟を起こさなくてはなりません。
さらに、その区分所有権および敷地利用権を競売にかける方法もあります。この請求も同じく訴訟を起こすことが必要で、総会において特別決議を要します。事前に当事者に弁明の機会を与えなければならないのも同様です(同法第59条)。
訴訟を起こすときの注意点
最終的な解決方法として訴訟を起こす場合、弁護士費用などの多額の費用と手間がかかります。それに同じ建物で生活する者としては、できるならば穏便に解決したいものです。まずは管理組合名で、文書にて改善の申し入れを行うか、相手の言い分を聞く場を設けて話し合いを行なうのがいいでしょう。相手が応じない場合には、内容証明郵便にて警告を行い、それでも改善が見られない場合には、訴訟に持ちこむことになります。
訴訟にかかる費用は、管理組合の予算から支出することになるので、臨時総会などを開いて決議することになります。その際には、管理組合の総意として訴訟を起こすことを確認しておかなければなりません。
管理組合が法人化されている場合には、法人名で訴訟を起こすことになりますが、法人でない場合には、管理組合の管理者(多くは理事長)が原告となります。
損害額が30万円以下であれば、少額訴訟制度を活用することができます。これは、少額の金銭に関する紛争を想定した制度で、簡易裁判所で行います。原則として1日で審理を行い、その日のうちに判決が出されます。しかも弁護士を立てなくても、本人だけで訴訟を行うことが可能です。
ただし、弁護士に依頼しないとしても、法律の専門家によるアドバイスはほしいものです。そこで行政などが行っている無料法律相談窓口を利用したり、簡易裁判所の相談窓口に出向いて相談してみるのがいいでしょう。
管理規約で専有部分の用途を制限する
繁華街に近いマンションでは、弁護士や会計士の事務所が入っていたり、会社の看板が掲げてあるのがよく目につきます。ただし、住宅地にあるマンションの場合は、事務所専用として使用するケースは少ないと思われます。事務所使用をしているとしたら、経費節減のために自宅マンションを事務所兼用にする、自宅の居室を使って学習塾や英会話塾などを開設する、などのパターンが考えられます。
専有部分をどういう用途に使用するかは、基本的に所有者の自由です。ただし、不特定多数の人間の出入りを認めると、深夜まで人の出入りが途絶えないなど、居住環境の悪化や防犯上の問題も考えられますので、管理規約によって制限を加えることができます。
標準管理規約(単棟型)では、専有部分を住宅以外の用途に使用できないように定められています。反対に、事務所使用が管理規約にまったく制限されていないケースもあります。まずは自分の住むマンションの管理規約をよく調べてみることです。
自宅兼事務所としての使用は可能か
ここでは標準管理規約と同じように、住宅以外の用途に使用できないと管理規約に定められているケースについて考えてみましょう。
まず住居として使用せずに、もっぱら事務所、営業所として使用するのは論外で、まったく認められません。
それでは住居として利用しながら、自宅兼事務所、教室とする場合はどうでしょうか。たとえば主婦が自宅を使ってする少人数の学習塾やパソコン塾などを開くのも絶対に許されないものでしょうか?
標準管理規約には、「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」とありますが、それには次のような注釈(コメント)があります。
「住宅としての使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する」
すなわち、住戸を事務所として使用していても、そこに生活の拠点があればいいことになります。ただし、区分所有法の定める「区分所有者の共同の利益に反する行為」(第6条第1項)に該当するかどうかが、事務所としての使用が認められるかどうかの分かれめになるでしょう。
たとえば、パソコンによるデータの打ち込みや軽作業を行うなどの一般的な内職ならば、特に人の出入りがなく、他の住戸に影響を与えるものではないので、認められると考えられます。
次に華道、茶道、書道などを教える場合では、教室の規模や生徒の人数によって変わってくると考えるべきでしょう。生徒が多くなってくると、他の住人への影響も大きくなるので、認められないと考えるべきです。これらのように判断が難しいケースが数多く出てくるようであれば、明確な判定基準(業務内容、規模、スタッフ・顧客・生徒の人数など)を管理規約や使用細則で定めておくといいでしょう。、
店舗に営業規制はかけられるか
商業地区の大通り沿いのマンションには、下層部分に店舗が入っていることがよくあります。このように1つのマンションに住戸と店舗などの商業施設が入っているマンションは複合用途型マンションと呼ばれています。
コンビニエンスストアが入っていると、住人にとっては買い物に便利である反面、夜中に不良グループの溜まり場になる可能性があります。こうしたトラブルを回避するには、まず管理規約のなかで「店舗部分の区分所有者は、その専有部分を店舗として使用するものとし、他の区分所有者の迷惑になるような営業形態、営業行為をしてはならない」などと定めておくことです。同時に、営業してほしくない業種を具体的に特定するとより効果的です。
また、店舗部分の区分所有者が、その専有部分を他の事業者に貸与するケースも考えられますので、その部分の規定も盛り込んでおくのがいいでしょう。条文の内容に関しては、複合用途型マンションに向けた標準管理規約があるので、参考にしてください。