管理組合のためのマンション管理コンサルタント

専用駐車場のトラブルはこうして回避する

駐車場不足が引き起こすさまざまな問題

多くのマンションで駐車場不足が深刻な問題となっています。近隣の月極駐車場を借りている人も、住戸から離れているために、マンションの敷地内や隣接する道路に不法駐車する例も多くみられます。そのため、次のような問題を引き起こしています。

  1. 市区町村のゴミ収集車の走行が阻害されたり、ゴミ収集場所への横づけができなくなったりして、収集作業に支障が出ている
  2. 救急車、消防車などが走行不能になり、緊急時に深刻な影響が出るおそれがある
  3. 歩道に乗り上げて駐車したり、路肩を占拠して停める自動車が多く、歩行者や車椅子での通行の妨げになっている
  4. 道路の見通しが悪くなることで、特に幼児、高齢者、障害者には交通事故の危険性が高くなっている
  5. 縁石、植込みなどの工作物が破損するなどの被害が出ている

これらについて、別個の問題と考えるべきではありません。駐車場の不足と不法駐車対策、マンション敷地内の環境整備を1つの問題として総合的に解決方法を探る必要があります。

また、自家用車を持たない区分所有者へ配慮することも必要になります。駐車場の新増設は非保有者にとっては不公平を感じる原因にもなります。そこで、不法駐車対策を行うことや、駐車場利用を有料として、利用料金を一部、修繕積立金にまわすなどして、あらゆる立場の人にメリットのある方法を考えなければなりません。

専門委員会の設置を検討する

駐車場問題の解決には、専門的知識を必要とします。しかも、いろいろな立場の人たちの要求や意見を汲み取り、それらを調整しながら解決法を探らなければなりません。そこで、専門委員会を設置することも検討してみるべきでしょう。

まず駐車場不足を解消するには、共有敷地内駐車場を新増設するか、近隣の民間駐車場を借り上げることが考えられます。しかし、大規模な増設となると収容台数の大きな機械式駐車場を設置することになるでしょう。

機械式駐車場の建設には多額の費用がかかり、設置後にも保守費用を必要とします。そこで利用者から徴収する使用料金は、建設費、保守管理費に加えて、将来の修繕費なども考慮した上で決定する必要があります。その際に余剰金が出るように設定して、それを修繕積立金に充当することで、自家用車を持たない人を納得させることにします。さらに排ガス対策として、駐車場を植え込みで囲うなどの配慮も必要です。それは美観の観点からも望ましいでしょう。

違法駐車対策は必要不可欠

違法駐車を放置すると、「停められる」という評判が立ち、さらに悪化を招くことになりかねません。早い段階での対策が望まれます。駐車場の新増設を行なうときには、その完成と同時に違法駐車対策を行なうのがいいでしょう。具体的には次のような方法が考えられます。

  1. 違法駐車禁止の看板を設置する
  2. 敷地内や駐車場の巡回をする
  3. 来客用の駐車許可証を発行する
  4. 違法駐車をしやすい場所に、縁石などを設置する
  5. マンションの敷地外であれば、地元の警察に対策を促す

また、巡回などに当たり、管理組合は警察官ではないことを心得ておく必要があります。外部の者が違法駐車をしたからといって、タイヤをパンクさせることはもちろん、ステッカーを糊づけする行為も器物破損になる可能性があります。

なお、違法駐車対策を実行に移す際には、総会などで組合員の了解を事前に得ておくことも大切です。

駐車場を特定の人が継続して使用しているケース

最初に入居した人たちと、後から入居した人では駐車場の使用で不公平な扱いになっている例が少なくありません。

「第一次募集で入居した人たちの駐車場は確保されている。その人たちが継続してずっと使用しているので、後から入居した者たちは、いつまでも駐車場が使えない」

「ほぼ全戸に駐車場が確保されているが、最初に便利な場所を取った人が、ずっと使い続けているので、他の入居者たちから不満が出ている」

こうしたパターンがあります。しずれにしても、同じマンションに住む人同士の問題なので、感情的なしこりが残らないように解決策を練らなくてはなりません。

まず、駐車場は共用部分であり、基本的に各区分所有者が平等に利用できるようにするべきです。確保した駐車場を、そのまま恒久的に使用する権利が保障されているものではありません。したがって、利用希望者全員によって、定期的に抽選を行うか、順番に利用できるようにするなど、公平な対応が望ましいでしょう。

既得権者に配慮して円滑な管理を行う

ただし、機械的に公平に扱うだけでなく、時には柔軟な対応をすることも必要です。既得権を無理に手放せさせると、ヘソを曲げてしまい、その後に規約改正などの特別決議が必要な議案を話し合う時に、合意形成がしずらくなる可能性があるからです。

ある機械式駐車場を使っていたマンションの入居者のケースですが、分譲の仮契約をした時点で駐車場の抽選をしたところ、とても出し入れのしやすいパレットが確保できたことで、本契約を結ぶことに決めたという経緯がありました。

しかし5年たった頃に、他のパレットの利用者から不公平だという声が上がり、区分所有者の間でも再抽選を行うことが多数意見になりました。

そこでこの区分所有者は今までと同じパレットを使う代わりに、利用料金を2千円余分に払うことを提案し、他の人たちも納得して、その余分な料金を支払う人以外の人たちだけで抽選を行うことになりました。

玉虫色の決着かもしれませんが、結果的に不公平感のない円滑な管理運営に結びつきます。みんなが同じマンションに住んでいるのですから、気まずい思いをしないですむ方法を考えることも必要です。

駐車場の専用使用権つきで売買できるのか?

以前は、マンションの敷地内の駐車場を専用使用できる権利、すなわち「駐車場専用使用権」をつけた区分所有者を一般の住戸の区分所有権より高額で販売する事例が多く見られました。

しかし、この駐車場専用使用権という権利の内容が明確ではありません。そもそもマンションの敷地は、区分所有者たちの共用部分のはずです。その土地に駐車場を設置して使用権を売却するとなると、敷地の2重売りとも考えられます。

また、その権利がいつまでも続くのかという疑問も生まれます。駐車場専用使用権つきでマンションを購入した人は、当然、永久に使用できると考えているでしょう。ところが、駐車場を持たない区分所有者たちが「管理規約を改正して、くじ引きにすべきだ」と主張することも考えられます。こうした問題が生じたことから、79年に建設省(当時)は、次のような主旨の通達を出しています。

「駐車場専用使用権の分譲は好ましくない取引形態である。専用使用権を設定する際には、存続期間、使用料などを公平かつ妥当なものにし、管理規約に定める。使用料から利益が生じた際には修繕積立金に繰り入れることが望ましい」

したがって、所有権に付随する専用使用権としての売買は認められるとも考えられますが、駐車場の専用使用権を単体で売買することはできません。

マンション管理の基礎知識

お気軽にお問い合わせください TEL 045-242-8506 受付時間 10:00 - 18:00 [ 土・日・祝日除く ]

マンション管理の基礎知識

川原が主宰する職業マンション管理士集団


川原も紹介されている
朝日新聞が運営協力する専門家紹介サイト

代表 川原一守の著書
   

記事執筆、メディア掲載など
 
PAGETOP
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.