区分所有法はマンション管理の憲法
マンション管理の難しさは、1つの建物をいろいろな考えを持った複数の人たちが所有していることにあります。たとえば、永続的に暮らすつもりなのか、買い換えを予定しているのか、あるいはすぐに転売するつもりなのか-マンションを持つ目的によって、建物に対する思い入れやマンション生活についての考え方は千差万別です。
マンションを管理するには、そうしたさまざまな意見を集約していかなければなりません。そこで、建物を複数の所有者が所有する場合の権利関係を「建物の区分所有等に関する法律(一般的に「区分所有法」と呼ばれています)」という法律で定めています。
マンション生活のトラブルは、管理規約に沿って解決を目指しますが、管理規約は区分所有法を法律的な拠り所としています。
2003年6月に改正区分所有法が施行
区分所有法が最初に施行されたのは、1962年(昭和37年)です。日本住宅公団(当時)による団地の供給や民間企業による分譲が始まったことが背景にあります。
その後、 1983年(昭和58年)に大改正が行われ、さらに2003年6月に一部改正された区分所有法が施行されました。
2003年6月の具体的な改正点としては、 まず1つにはマンションで一般的な大規模修繕を行う際の、管理組合での議決要件が、「著しく多額の費用を要する」と解釈されて4分の3以上の賛成(特別決議)が必要となることがあるという考え方から、費用の要件はなくなり、共用部分の重大変更を伴わない場合は過半数(普通決議)で可能となりました。
次に、管理組合を法人化する際の「30戸以上のマンション」という要件が撤廃されました。
さらに、 建替えを行う際の、「建物がその効用を維持し、または回復するのに過分の費用を要すること」という要件が撤廃され、「区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数決」だけになりました。ただし、総会の招集通知は少なくとも2ヶ月前とし、その際には次の4点を通知しなければなりません。
- 建替えの理由
- 効用の維持・回復に要する費用
- 修繕計画の内容
- 修繕積立金の総額
しかし、区分所有法が時代とともに様変わりしても、建物の区分所有に関する法律であることに変わりはなく、生活の場としてのマンション管理の具体的な方法にまでは触れられてはいません。
特に近年、管理会社に対する規制がないことによる弊害が目立ってきました。それらの規定が法律に盛り込まれるには、「マンション管理適正化法」の施行を待たなければなりませんでした。