管理会社と管理組合の関係を理解する
マンションの管理は管理組合が主体となって行うべきものですが、管理組合の構成員である区分所有者たちだけで、パーフェクトな管理が可能でhそうか?管理というのは、パートタイムのように、1日の空いた時間だけで行えば済むものではありません。1年365日、24時間継続して行うものです。
また、マンション管理にはお金がかかります。大規模マンションとなると、1億円単位の巨額になる場合もあり、その出し入れを誰がやるのかが問題になるでしょう。
さらに給水タンク、エレベーターなどの設備の管理、各種の点検、修繕など、専門知識が必要な仕事や法定点検など専門業者に任せるべき仕事もあります。
そこで管理会社に代わって、日常の管理業務を行うのが管理会社です。管理の主体は管理組合であり、管理会社はサポーター役を務めることになります。
ところが、管理組合がきちんと機能せずに、管理会社に牛耳られているケースが珍しくありません。こうしたことが起こるのは、管理組合は素人の集まりであり、マンションの管理に関する専門知識が不足しているといった、やむを得ない面もあります。しかし管理会社に任せきりにして、自主性を持って管理しようという意識に欠けていることも事実です。
2001年に施行されたマンション管理適正化法により、マンション管理会社も登録制になり、重要事項についての説明責任が明確になりました。特に管理委託契約を継続する際には、管理会社は重要事項を説明する責任を負います。しかし管理組合側が、きちんと内容を把握する気がなければ、せっかくの既定も何の役にも立ちません。
管理委託契約の内容を確認する
管理業務を委託するに当たって、管理組合と管理会社との間では、管理委託契約が結ばれます。この契約は非常に重要です。管理会社がきちんと仕事をしているのか、どこまで仕事を頼んでいいのかを判断する際の基準となるからです。
管理組合にはマンション管理に関する知識が不足している場合が多く、そのために管理会社と契約を結ぶに当たって、有効な主張ができずに、管理会社の思惑通りに契約内容が決められてしまいがちです。
そこで、1982年に建設省(当時)が管理委託契約書の雛形として、「中高層共同住宅標準管理委託契約書」と作成しました。その後、2003年に国土交通省が内容の見直しを行い、「マンション標準管理委託契約書」と名前を変えて改訂しました。現在、国土交通省では、管理会社と管理組合とのトラブルを防ぐため、このマンション標準管理委託契約書を行政指導の指針としています。
自分のマンションの管理会社との契約書の内容が妥当かどうかを判断するのに、この標準管理委託契約書と比較してみるといいでしょう。管理会社に対して、どのような業務を委託すればいいのか、管理組合、居住者が管理会社との間で起こりがちなトラブルを防止するにはどうすればいいのか、委託する際にどんな主張をしておくべきなのかが盛り込まれています。
ちなみにマンション標準管理委託契約書では、次の4項目を委託業務と例示しています。
- 事務管理業務・・・・・・出納、会計など
- 管理員業務・・・・・・受付、日常の巡回など
- 清掃業務・・・・・・共有部分の清掃
- 設備管理業務・・・・・・エレベーターや給排水設備などの法定点検・メンテナンス
管理組合と管理会社の間には、管理委託契約が結ばれていますが、そこで管理委託契約書とともに「業務仕様書」が存在するはずです。管理組合の役員に就任した際には、それらに目を通しておかなくてはなりません。その上で管理会社に問題があると感じたら、理事会において契約書を再チェックしてみることです。
契約内容にない仕事は強制できない
「管理会社がきちんと仕事をしてくれなくなったんです」
こんな相談を受けたことがあります。さっそく、具体的な内容を聞いてみました。
「以前は総会や理事会にも出てきて、議事録をつけてくれていました。それが急にやらなくなったんです。サービスも悪くなりました」
そこで、そのマンションの管理組合と管理会社の間で結ばれている管理委託契約書や仕様書をチェックしてみると、議事録については一切書かれていませんでした。すなわち、以前は契約にない仕事まで、親切でやってくれていたのです。それをやらなくなったからといって、文句をいうのは筋違いです。
それに議事録は、本来は役員が作成すべきものです。
管理会社は、マンションにおけるすべての雑用を行うものではありません。管理組合や区分所有者から頼まれたことを、何でもする必要はないのです。
管理会社が業務を遂行しているかどうかは、管理委託契約書および仕様書をよく読んで、そこに記載された仕事を行っているかどうかで判断すべきです。もし、業務をきちんとやっていないと主張するならば、契約書をチェックするところから始めるべきでしょう。
実は、この契約書にろくに目を通さずに、管理会社に対する不満を言う理事長や区分所有者が少なくはありません。
管理会社を良きパートナーとするためには
本書では、管理会社に対して厳しいことを随所で述べていますが、本来は、管理組合と管理会社とは良きパートナーとして、いい関係を築くことができるはずです。
管理会社はマンション管理のプロなので、さまざまな問題の解決方法や、マンションライフをより快適にするノウハウ・情報を持っています。日常の簡単なトラブルであれば、管理会社や管理人に相談すれば、すぐにアドバイスをもらえることもあるでしょう。あくまでも管理組合が主体性を持ちながらも、頼るところは頼ってみるべきでしょう。
2000年7月の時点で、国土交通省に登録したマンション管理業者の数は585社です。そのうち、1万戸以上の規模管理を行っている業者は59社で、全体の約10%に過ぎません。反対に3千戸未満の業者數は433社で、全体の74%です。
このように、マンション管理会社は比較的規模の小さい業者が多いことがわかります。さらにマンション管理業務を専業としている業者は少なく、他の業務との兼業が多いのも特徴です。
それというのも、すべての業務を自社で行うのではなく、専門性の強い業務に関しては、さらに外注に出すことが可能だからです。
必ずしも、規模の大小で測れない部分もありますが、規模の小さい、本業の片手間でマンション管理業務を行っている業者では、マンション管理に関するノウハウをあまり持っていない場合があります。これは、区分所有者にとっては、自分のマンションの資産価値に関わる大問題です。もし、そのような業者に業務を委託していたなら、即刻、管理会社を変更する方向で検討しなければなりません。
ただ、誤解のないようにつけ加えるならば、管理の良し悪しは、会社の規模よりも、担当者や管理人の資質に大きく左右されると言えるかもしれません。
管理会社の担当者や、管理人について不満がある場合には、遠慮なく言うことが必要です。大切なことは、相手の管理会社の担当者と連絡を密にして、いい意味で、「あそこのマンションはうるさい客だ。いい加減にはできないな」と印象づけることです。黙っていたのでは、相手の好きなように進められてしまう危険があります。