設備の定期点検は法律で義務付けられている
建築基準法では、マンションの管理者に対して、エレベーターや建築設備などについて有資格者による点検を行い、報告することを義務づけています。
また、消防設備、給水設備、電気工事などについても、それぞれ消防法、水道法、電気事業法などにより、点検・報告が義務づけられています。
このように法律で義務づけられている点検を「法定点検」と言い、エレベーターや建築設備については年1回、消防設備については6ヶ月に1回の機器点検と年1回の総合点検、給水設備についてはも貯水槽の容量などに応じた点検の実施、報告が必要です。他にも、公共下水道のない地域のマンションであれば、浄化槽の点検も必要になるなど、法定点検もさまざまです。
こうした法定点検は、通常、管理会社がすべて専門業者を手配して行なってくれますが、管理委託契約を見直して、管理組合で個別に業者と契約することも可能です。
なお、法定点検が義務づけられていない場合でも、設備が順調に稼動するために行なう定期点検保守があります。たとえば、機械式駐車場の点検などです。
防火管理と避難訓練は欠かせない
居住者の数が50人を超えるマンションについては、防火管理者を選任する必要があります。複合用途型マンションであれば、居住者または事務所の常駐者など30名以上で防火管理者の選任の必要があります。
防火管理者は防火管理者講習を受講した者でなければなりません。建物の延べ床面積が500平方メートル未満のマンションは乙種防火対象物であり、乙種防火管理者でも管理できますが、500平方メートル以上では甲種防火対象物となるので、甲種防火管理者でなければ管理できません。また、収容人員30人以上の飲食店が入居しているマンションの場合は、延べ床面積が300平方メートル以上で甲種防火対象物となります。この防火管理者講習は、乙種が1日、甲種は2日の講習を受けることになります。
防火管理者は消防計画を作成し、避難訓練の実施、消防用水や消防設備の整備および点検を行なうとともに、火気の取り扱いに関しても監督する責任があります。ただし、マンションの場合、防火管理者の業務に収容人員の管理は含まれません。
50人以上が居住するマンションでは、同様に消防設備および避難訓練を実施するように義務づけられています。防火管理者の計画に基づき、定期的に行なうといいでしょう。また、基準以下のマンションであっても、管理組合の主導で避難訓練を行なうのが望ましいでしょう。
管理組合が加入すべき保険
マンションにおいては、火災などによって建物、設備が損傷したり、または機会設備の不備などにより第三者に損害を与えることもあるでしょう。損害賠償など区分所有者に多大な負担を強いることのないように、損害保険に加入しておく必要があります。
専有部分に関しては、それぞれの区分所有者が加入することになりますが、共用部分については管理組合が加入します。
区分所有法においても、「共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす」(第18条4項)という規定があります。したがって保険加入は管理組合の義務といっていいでしょう。
まずは、住宅火災保険などの火災保険に加入する必要があります。ただし通常の火災保険では、地震が原因の火災では保険金が支払われない契約になっています。そこで地震保険に特約で加入することになります。その他に、機械設備の故障の際の修理代用のマンション機械保険や、ガラス部分の損傷に関するガラス保険などもあります。
屋上の設備や外壁の一部が落下して、通行人や自動車などに損害を与える可能性もあります。また敷地内にあるブランコなどの遊具などで子どもがケガをすることもあるでしょう。こうした場合には、前述したように管理組合に管理上の責任が問われます。そこで損害賠償保険にも加入しておく必要があります。
この場合も、通常では機械設備やエレベーターの誤作動による損害賠償に関しては支払い対象とならないケースが多いので、昇降機(エレベーター)特約、駐車場特約などの特約を付加する必要があります。それぞれのマンションの事情に合わせて加入するといいでしょう。
マンションの管理組合を対象にした「マンション修繕費用積立保険」もあります。マンションの共用部分を一括して担保する「補償機能」と「積立機能」を兼ね備えた保険として損害保険各社から発売されています。
いまではさまざまな保険商品が登場しているので、複数の保険会社または代理店で保険プランの提示とともに保険料の見積もりを求めて、最も適した保険に加入するようにします。
なお、これらの保険に加入する場合の名義人は、通常は管理組合の理事長、管理組合が法人化している場合には、法人名になります。